2006年09月号 掲載
伝言 ブラジル・ペルナンブコ州
関 洋人 (大洲市在住)
レシフェ、ポア・ビアージェン海岸のアイスクリーム屋
夕方五時過ぎに、カルアルーからレシフェに帰着。夕食は、前夜と同じくシュハスカリアTertuliaへ。今回の旅で、三人一緒にとる最後の夕食だ。私は友人に、「大洲の両親に何か伝言はないか?何か書けよ。渡すから」と何度も促した。信じ難いことに、彼は、ブラジルに来て以来、約十年間経った今までに、唯の一度も両親に手紙を書いたことがない。しつこく促すと、渋々、ごく簡単な伝言を書いた。彼の日本語も少し変になってきている。
(体躯)などという、あまりわれわれが日常使わない言葉を用い、「気おつけて」と書いた後に、私に「これでいいんだな」と念を押す。私が「テニヲハがおかしい。「お」ではなく「を」だ」と言うと、「そうだったかなあ」と訝しげにつぶやきながら訂正するといった具合。ヘジーナは、彼が何と書いたのかが気になって仕方がないらしく、メモ用紙に「Quero saber o que ele escreveu(彼がなんて書いたか知りたい)」と書いて手渡した。ゆっくりと食事を楽しみ、九時過ぎにボア・ビアージェン海岸通りをぶらぶら散歩しながらホテルに戻った。レシフェは、少し北のフォルタレッサ、少し南のサルバドールと共に、欧米からの買春ツアーの「メッカ」になっている。ここ、ボア・ビアージェン海岸も、そろそろ春をひさぐ十代の少女たちの姿が目立つ時間になる。私の今度の旅もいよいよ残す時間が僅かになってきた。……。
(つづく)
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