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2002年10月号 掲載

 
イグアス 国境地帯の旅 
関 洋人 (大洲市在住)

イグアスの滝
 一九八八年十二月二十八日、ほとんど眠ったという気になれぬまま、小雨模様の朝を迎えた。サンパウロは今が雨季の始まりである。ゆっくりとカフェ・ダ・マニャン(朝食)を済ませた後、映画「ミッション」の舞台となったイグアスの滝に向かうため、われわれ一行六人はサンパウロ郊外のグァルーリョス空港に向かった。午後〇時十五分発SC(クルゼイロ・ド・スル)二五一便に搭乗。機内には蝿が飛び交い、席は自由お気に召すままだ。二時間ほどのフライトの後、機は鮮やかな赤い大地のフォス・ド・イグアスに着陸した。フォス・ド・イグアスは、イグアスの滝へのブラジル側の拠点である。世界最大級の滝イグアスは滝幅全長五キロメートルに及び、落差は約百メートルもある。名高いナイアガラの滝のカナダ滝が滝幅九百メートル、アメリカ滝が三百メートル、落差が共に五十メートルであることを思うだけでその途方もない大きさに驚かざるを得ない。滝はブラジルとアルゼンチンの国境に位置し、そのすぐ近くまでパラグアイの領土が迫っている。つまり三つの国の国境に極めて近い。空港からマイクロバスで国境を越え、アルゼンチン側の街プエルト・イグアスに近いGarganta del Diabro(悪魔ののどぶえ)、に向かった。イグアスの滝の中でもっとも迫力のある滝とされる。バスに乗り込んだとき、今にも泣き出しそうだった空から大粒の雨がものすごい勢いで落ちてきた。だが、滝に近い駐車場に着いて車を降りると雨はぴたりと止んだ。雨上がりの蒸し暑い空気の中を、川に架かる遊歩道(というよりは延々と続くぼろい橋)を約一キロメートルほど歩いてようやく滝に着いた。さすがに恐怖感に襲われる滝の風景であるが、ちょうど乾季から雨季への移行期で水量がいちばん少ない時期であったため、滝によってはほとんど枯れてしまった所もある。
(つづく)

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