1999年09月号 掲載
ロザリオ(ブラジルマラニョン州)
関 洋人 (大洲市在住)
ブラジル風の昼食
釣り上げた魚を持つドクトルの息子、友彦。
メルカドを歩きまわっているうちに昼近くになり、私たちはエウジェニの経営するランショネチ(軽食堂)に立ち寄った。エウジェ二が経営していると書いたが、この店の実権は彼の妻アフィフィが完全に握っている。彼女はシリアから資金を持ってブラジルに移住してきたアフィフィ家の娘で、エウジェニは婿養子なのである。
私たちは昨晩、一年分ほどの牛肉を食べていたため、肉抜きの食事を頼んだ。ブラジルの主食の一つフェジョン豆に、魚と野菜の炒め煮とケチャップ味のスパゲティ。これを各自、自分の皿に取り分け、パサパサのインディカ米を添え、それにファリーニャ(マンジオカ芋の粉)をふりかけ、ごちゃまぜにしてネコマンマ風にして食べる。これが正統派のブラジル食だ。
食後、先日、まったく釣れなかった釣に出かけた。幹線道路をはずれ、ジャングルの中の泥々、ガタガタの道をくだんのピックアップトラックに乗って、二、三十分も走っただろうか、突然、ジャングルの中に泥水の溜まった池が点在している場所に出た。なんと、釣り堀なのだ!ブラジルの地の果てまで来て釣り堀とは!友人の話によれば、この釣り堀は、この辺り出身の政治家が、連邦政府から僻地振興補助金を引き出すために、アリバイ的にやっている事業だという。しかし、それでも一応、テレビでコマーシャルを流し、週末には五、六十キロ離れたサンルイスあたりからも結構釣り客が訪れるという。
釣り堀にいる魚はタンバキーであると友人は確信をもって言った。まわりにいた男たちも、私たちが釣り上げた魚を見て、口々にタンバキーだと言った。しかしその魚は、以前マナウスの魚市場で何度も見かけたタンバキーとはまったく違う。念のため、日本に帰って熱帯魚図鑑で調べてみたらどうもコロソマのようであった。私たちは、餌に昨晩のフェスタで余った超高級牛肉を持参したが、釣り堀の管理人は餌等なんでもよいと言った。池の周囲にたわわに実っているマンゴーの実をとって試してみたら、なるほど釣果は牛肉の餌と少しも変わらなかった。
当地の釣りは日本の釣りと正反対!静かに糸を垂れるのではなく、釣竿の先で始終水面をピシャ、ピシャと音をたてながら、せわしなく叩く。すると魚は獲物がいると思って、餌に食らいついてくるのである。さすがに釣り堀だ。いくらでも釣れる。
暮れなずむ頃、ふたたびジャングルの道を通って家路についた。荷台に乗った私とドクトルの頬にヘッドライトに誘われてか、虫がひっきりなしに体当たりしてくる。まるで小石にでも打たれているようで痛い。
その日は、家に帰り着いた時刻が遅かったので釣った魚は、その翌日、エンプレガーダ(お手伝いさん)に唐揚げにしてもらつて食べた。結構うまかったが、皿にはすくなくとも三十匹を超える蝿が群がっていた。
(つづく)
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