第18回
 内子から石畳に登り、下灘へ下る
 
 

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- 弓削神社の屋根付橋 -


 内子から石畳に登り、下灘へ下る

- 町並みのはずれから出発 -



- 田丸橋が右手に見える -


- 田丸橋で -

- 十字架が刻まれた大師像 -

 大阪に住む自転車大好きの友人が半年ぶりに南予にやってきた。今回は以前出かけて雪になって引き返した内子町周辺を走ることにした。
 友人はコペンという軽自動車の初代の設計者だ。自分が設計した小さなスポーツカーのトランクに自転車をびったり詰め込んで約束の場所の卯之町駅前にあらわれた。見事なパッキングである。自転車をとりだす様子に見とれてしまった。
 卯之町から内子までは、私の車に2台を積み込んで移動した。走りはじめは、八日市の町並みのはずれである。右に短い急坂を下り、左に折れてしばらく行くと麓川沿いの道に出る。川にそってやさしい勾配の道を、里山の風景を楽しみながら快適に登っていく。宮の下堰の切り通しを過ぎ、10分ほどで屋根付橋が右手に見えてくる。田丸葉である。自転車をとめて橋の所まで歩く。友人はしきりに屋根付橋に感心している。引き返して、しばらく行くと、一車線になった道が河内という集落のあたりで広がり川をまたいだところで自転車をとめる。左手の民家の先にある小さなお堂のお大師様を友人に見てもらうためである。このお大師様は赤い前垂れをかけておられるが左肩の下に十字架が刻まれていて、隠れキリシタンの遺物と言われている。お堂を管理されている民家の方にことわって見せていただいた。この石畳への道は鉄道が内子を通る今、内子から、町中から山村に向かって、谷を分け入る感じに思われがちだが、歴史の中の大部分の時代、江戸時代以前、明治大正、昭和の予讃線が瀬戸内海側を通っていた頃までは、海から峠を越えて内子に入る方向で外界の文化が流れてきたものと思われる。
 この道沿いにはイエスを抱いたマリア像にも比定される悲母観音のあるお堂もある。友人にそんな話をしながら美しい流れの所々にある堰や、棚田の石垣を眺めながらさらに登る。心地よい追い風を受け、三十分ほどで石畳の入口に着いた。そこから少し登ると石畳の宿がある。昔子供をつれて泊まったことがある。自転車をとめて中に入ると集落の人々が草を刈ったり庭の手入れをされていた。主奥の隣の小屋に、喫茶が出来る場所がしつらえられていた。


- 川に沿って田に水を引くための堰がいくつもある -


- 慈母観音 -
木食上人の木像を模刻したという説もある


- 石畳の集落の中心 -


- 石畳の宿 -
内子町の紹介ページ

- 水車公園の前で -


- 谷の向こうに石畳の宿 -
美しい里山の風景が広がる
 石畳の宿から細くなった道をしばらく登ると、左の谷のつきあたり、牛の峰への登山道の入口に水車小屋がある。周辺は小さな公園になっていてトイレもある。石畳地域は、内子町でも、専業農家と、兼業農家ではあっても自家農業からの収入を主とする農家が多く、過疎と高齢化が特に進んでいる地域である。農と地域に対する深い思いを共有し、地域の暮らしを守りながら、次の世代に石畳の自然と生活文化や歴史を受け継いでいこうという地元の若い人たちが、最初に建てたこの小さな水車小屋が、行政を動かして、公園の整備が行われたと聞いた。
 水車小屋から登って下って、また狭い急な道を上っていくと弓削神社に着く。池から神社の拝殿にむかってかけられた屋根付橋がすばらしい。友人は田丸橋にもまして心を動かされたようだ.
 登ってきた石畳の宿の背後に牛の峰に連なる青い山々が見える。今度は、枝垂れ桜のある集落の方から石畳の入口にもどる。そこから今度は鳥越峠に向かってひたすら登る。三十分ほどで標高600mほど峠に着く。自転車を切通しの擁壁にたてかけ、右手の林に入る。ここにも十字架をつけたお大師様がおられるのである。ずいぶん久し振りなので迷うかとも思ったがすぐにわかった。遠い昔に海からキリシタンの信仰が峠を越えて内陸に伝わっていったのであろうか。
 かすむ瀬戸内海を見ながら一気に下り、寅さんの映画の舞台になった下灘駅に寄り、国道387号から長浜へ。開閉橋の「赤橋」を通って、新谷、大洲経由で内子に引き返した。
 帰りは卯之町のステーションでゆっくり晩ご飯。夏にはまた走りに来ると友人はふたたびコペンに自転車を詰め込んで帰っていった。


- 鳥越峠の大師像 -
やはり、肩に十字架がある

- 海を見下ろす下灘駅 -
寅さん「寅次郎と殿様」の舞台になった

- 長浜の開閉橋。「赤橋」で -




- コペンのトランクにロードレーサーが収まる -


- 卯之町駅前ステーションの晩ご飯 -
ウチワエビがおいしかった

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