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2003年03月号 掲載

 
イグアス 国境地帯の旅 
関 洋人 (大洲市在住)
 釣り銭を用立てに行った店の主人は、客を置いたままどこかに消えて帰ってこない。店は一見まったく無防備で、私が少しでも悪心を起こせば、いくら商品を万引きしても誰も咎めるものはいない状態である。見えないところから誰かが客を見張るシステムでもあるのかもしれないと、ふと思う。
 一見、大らかで開放的な中南米のことだから少しそれは考えすぎとでもいいたいところだが、実はそうではない。中南米はのんびりして明るく、開けっ広げに見える反面、背後に大きな闇を抱えた油断も隙もない世界でもあるのだ。旅先で、よく聞く話をひとつ紹介しよう。日本人の客が、とあるホテルにチェックインし、部屋に落ち着く。するとすぐにノックの音がして、土地のポリスが部屋に乗り込んでくる。ポリスは麻薬不法所持の疑いで捜査するとその客に言う。もちろん、日本からやって来た客には、そんな覚えは少しもない嫌疑である。


開店準備にいそがしい露店。パラグアイ側旧プエルト・ストロエスネルで。
 多少のやり取りが続いた後、ポリスは丹念に部屋中を捜索する。そして、最後にベッドの下に潜り込み、そーれ見ろと言わんばかりに、麻薬を発見する。隠れもない証拠を突きつけられ、客は動揺し、有無も言わさず逮捕連行と、事が運ぶ。もちろんホテルの従業員とポリスがつるんで仕掛けた悪質な罠だ。そして、客は麻薬所持事件をもみ消してもらうために、当のポリスにそこそこの金を巻き上げられるという寸法である。
 とにかく中南米で油断は禁物だ。せめて、投宿したホテルのベッドの下くらいは点検すべし!
(つづく)

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