2005年02月号 掲載
関 洋人 (大洲市在住)
1993年8月30日に起きたリオ、ファべーラ地区住民21人の棺桶に入った死体が並べられた場所
観光客があふれるコパカバーナやイパネマは、リオの南部地区にあたり、リオの市内では比較的治安がいいとされている地区である。それでも私たちはコパカバーナ海岸から一本山手に入ったコパカバーナ聖母通りを徘徊中に発砲事件に出くわした。気楽に歩いていた私は、鈍い銃声に驚いて、振り向くと、ほんの数メートル離れた場所に打たれた男が血を吹き出して倒れていた。
ガイドブックには、ただ心構えとして、リオの治安が悪い場所が示されているだけであるが、実際のところ、リオでは発砲事件程度では話題にもならない。一般に、南のコパカバーナやイパネマからセントロ地区を過ぎ、北に行くにしたがって治安がだんだんと悪くなっていくと言われている。南の地区の店では見かけることはないが、セントロ地区では多くの店が常時厳重に施錠したままだ。客が来たのを確認すると、鍵を開けて店に入れ、また施錠する。買い物が終わって客が店を出る時にまた鍵を開け、客が出たらすぐに施錠する。一日中、これの繰り返しだ。そして、店内には銃を所持したガードマンが常駐している。
リオの治安の悪さというと、一九三三年の二つの事件、「死の部隊」を名乗る者たちによる、リオ・セントロ地区で起きたストリート・チルドレン(ブラジル全土で八百万人とも一千万人言われる)八人の虐殺事件とリオ北部ファべーラで起きた住民二十一人の虐殺事件などが想起されるが、その後もリオの治安は悪化の一途をたどっているようだ。一九九五年一月から九月にかけてのリオでの殺人事件による死者は一日平均二十四人。同年一月から十月までのリオだけで起きた営利誘拐事件の発生は八十八件。誘拐が増えたのは麻薬取締の強化の煽りで新たな資金源を求めた密売組織の犯行が増加したとされるが、理由の如何にかかわらず、空恐ろしい数字であることにかわりはない。
(つづく)
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