2000年09月号 掲載
ペルー・アマゾニア紀行 6
関 洋人 (大洲市在住)
焼魚定食を食べ、八時半過ぎに、街の中心アルマス広場に戻ってきた。三、四人の少年が手に何かを持って近づいてきた。なんとナマケモノの子供である。それまでに、イグアナやサルをこんな風にしてみせられたことは何度もあったが、町中でナマケモノは見たのは初めてだった。
少年たちにとっては小遣い稼ぎだろうが、私にとってナマケモノは充分に魅力があった。
少年の一人が「一ドルでどう?」と言う。触らせたり、写真を撮らせてくれたりするのである。「一ドルは持ってないけど、一ソル(0.4ドル)でもいいか」と聞くと、「それでいい」と言う。ナマケモノは、抱きかかえると腕にズツシリと重く、撫でると毛は剛毛で手触りが荒い。しかし、顔を間近に眺めると何とも間の抜けた愛敬のある表情をしている。鋭いといわれる爪を立てるわけでもなくとてもおとなしい。財布を出して、約束の一ソルを払おうとしたら、なんと五十センターボ(0.5ソル)しかない。だましたようで気が咎めたが「五十センターボしかないよ」と言ったら「それでいい」とあっさりしたものだった。稼ぎは、最初の言い値の八分の一となったが、少年たちは私から五十センターボを受け取ると、すぐに次の客を捜し始めた。
中心街を歩いていてふと気が付いたことだが、この街では物乞いと出会うことがなかった。これは中南米の街では非常に珍しいことである。ここでは、必要最低限の食べ物にはなんとか、事欠かない証であろうか。
九時近くにホテルに帰り着き、水のシャワーで汗を流した。二階のテーブルが四つしかない小さな食堂に行き、今日、二度目の朝食。このホテルは朝食付きで一泊三十ドルだから、食べないと損をした気がする。メニューは毎日同じ、マンゴージュース一杯、パリパリになって反り返った食パン三切れ、バターとジャム付き。ハムを刻んだのが入ったスクランブルエッグ。インスタント・コーヒー。
食後、一息ついてから例のイキトスを象徴する乗物モトカーロに乗って市内を見物に出かけることにする。アルマス広場の横にたむろしているモトカーロの群れを見て、どの車にしようかなと眺めていたら、サングラスをかけた一見ガラの悪そうなおっちゃんと目線が会い、成り行きで彼のモトカーロにのることになった。
(つづく)
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