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2001年04月号 掲載

 
ペルー・アマゾニア紀行 13
関 洋人 (大洲市在住)






 散髪をしてまた市場に戻った。少し歩いていると、ある店の店先で、今まで何度か食べたコラソン・デ・パルミットを作っているのを見かけた。椅子に腰掛けた中年の女性が、パルミット(ヤシ)の若芽を手に取って、まるでほつれた毛糸を解きほぐすような感じで器用に、パスタのようなコラソン・デ・パルミットを手繰り寄せている。
 しばらくその様子を眺めた後に、また少し先に進むと、今まで中に入ったことのない建物に出くわした。恐る恐る中を覗いてみると、何人かの男や女たちがパイチェやピライーバなどアマゾンで獲れる巨大魚を解体している。時刻は八時半を過ぎたところで、もう、ほとんどの魚が解体されてしまい肉片になっていた。
 大きな台の上では女たちがその肉片をさらに細かく処理している。セビーチェ(ペルー風マリネ)用にぶつぎりにしたり、調理や用途、部位に応じて、手ばやく切り分けられる。壁を見るとパイチェには禁漁の時期があり、漁獲してよいのは、十月から二月までのあいだだけらしい。
 大きなピライーバを解体していた男にカメラを向けると手を差し出して制止した。撮っちゃだめなのかと思ったら、そうではなかった。男は魚の向きを見栄えがするようにかえて、ニッコリ笑った。これでいい、これを撮れと言う。
 周りを見回すと猫がうろついて散らばった魚の切れ端を食べている。誰も当然のことのように気にもかけず、追い払いもしない。ここの猫は幸せだ。
(つづく)

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