1997年03月号 掲載
サンタクルス あぶない話5
関 洋人 (大洲市在住)
麻薬中毒患者更正施設付属孤児院、右から5人目が暴走運転の尼さんである。
サンタクルス郊外の麻薬中毒患者の厚生施設とそれに付属する孤児院を見学する機会にも恵まれた。施設の責任者であるシスター(尼さん)が前回の古い病院に来る用事があり、そこで待ち合わせて、彼女の運転で連れていってもらった。……が、このシスターの運転は恐かった。定員の二倍の十人くらい詰め込んだワゴン車を、修道女服姿でビュンビュン飛ばすのである。スピードは百キロ前後、道路は所々舗装がはがれており決して良い状態ではない。手に汗握る時間だった。
この施設では子供たちの表情が思いのほか明るかったのが救いだった。シスターの話では「週に何回か定期的に診察に来てくれる医師はいるが、歯科医師がいない。よかったら来てくれないだろうか」とのことだった。よくは観察できなかったが、子供たちの口腔衛生状態はかなり悪そうに見えた。そしてなお悪いことには、われわれはおみやげとして、大量の菓子を持ち込んだのだった。
この施設の運営は、イタリアのあるカトリックの宗派に属する人々のボランティアによって支えられている。将来に若干の不安を感じたが、彼女らもそれは充分承知していて、何度かイタリア政府に援助を申し入れているが、いい返事はもらえなかったとのことである。
私も帰国後、少しでも役に立てばと思って、段ボール一箱分の子供服を送った。…が返事はなかった。無事に着いたのだろうか。途中でネコババされることがしょっちゅうなのだ。
(つづく)
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