2001年06月号 掲載
ペルー・アマゾニア紀行 15
関 洋人 (大洲市在住)
亀の卵のゆで卵
今日はイキトスを去る日である。朝六時に起きて、日課の朝の散歩をしながらベレン市場に向かう。市場に入って、最初に昨日見つけた大型魚の解体場へ。今日は昨日より早い時間なので巨大なピライーバの解体作業の真っ最中。昨日と同じおっさんが彼の背丈と同じくらいの大きさのピライーバと格闘している。手際はまったく無駄がなく、あざやかというしかない。じっくり見学させてもらったのち、市場内の下着売りの店へ。実は私は手持ちのパンツの枚数に若干の不安があった。売られているパンツは柄物ばかり、無地はない。私は中で、いちばん地味な白と黒のまだらのパンツを一枚、2.5solesで購入した。色は地味だが柄はなかなかインパクトがある。そして、このパンツには、不思議なことに、前の内側に何のためにどのように使うのか皆目見当のつかない帯のようなものが縫いつけてあった。 市場を一巡して坂下のベレン地区に向かう途中、マイクを持った中年男がドクトルに近づいてきた。彼は地元のラジオ局の職員でドクトルにインタビューを試みたのであった。ドクトルは、突然の出来事にあわててしまい、日頃のスペイン語研鑽の実力を発揮しないうちにインタビューはうち切りになった。残念。
再び坂を登って市場に戻り、今日もまた屋台で焼魚定食を食べる。食後、ドクトルが昨日ジュース屋の隣りで見つけた亀のゆで卵の方に吸い寄せられるように近づいていく。今日でイキトスは最後だからドクトルは少しのためらいもなく席に腰かけて亀の卵を食べる。私もつきあった。一山7個で6soles(1個37円)。大きさを考えればなかなか高価な食べ物だ。柔らかい殻を剥くと中身は意外にも一様に薄緑色で全体がプリプリした歯触りだ。店の人の話では生卵は黄味と白味に分かれているがゆでるとまじってこういう色になるという。多少くせはあるが、旨いと言えば旨い。ただ、脂肪分がやたらと多く、手は脂だらけ。露店の柱に手ぬぐいがぶら下がっているが、もう多くの客が使った後で、脂でべとべとになっているから拭いても拭かなくても同じようなものだ。帰路、例の人のよいジュース屋のおやじが店を開けていた。今日、リマへ発つというと、彼は両手で固く私たちの手を握って「またここへ来いよ」と言ってくれた。
昼前に空港へ、手荷物検査の係官が「ピストルは持ってないか?」と訊く。到着のときと同じだ。飛行機は大分遅れている。待合室では航空会社の職員がおわびと言ってインカコーラとか、ビンボーとかいう炭酸飲料を配っている。一時間ちょっとの遅れで、やっとわれわれはイキトスを飛び立ちリマへ向かった。
(つづく)
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