1998年06月号 掲載
ラパス
関 洋人 (大洲市在住)
今日は大晦日である。朝食後、車で二十分位の所にある“月の谷”へ。その名のとおり、乾燥しきった土地に異形の岩肌が一面に広がり、アポロによる月面写真を連想させる。事実上、今日が最終日なので、早々と街へ戻り、最後のラパスの露店巡り。サガルナガ通りを歩くと、ちょうど昼時で、露店のおばさんたちは皆、出前を取って食事中だった。大皿に米が盛ってあり、その上に歯ごたえのありそうな大きな牛肉、脇にジャガイモが添えてある。これがラパスの昼定食。
それにしてもラパスでの買物では、さすがの
“値切りのドクトル”もたいして値切れなかった。低地サンタクルスの人間は、高地ラパスの人間をケチと言い、逆にラパスの人間はサンタクルスの人間を怠けものと罵るというのがよく解る。
夕方まで街をうろついてラパスに別れを惜しんだ。
一月一日午前零時。街全体が花火と爆竹の大音響で包まれる。われわれの今回の旅も終わりだ。派手な爆発音も私には物悲しく聞こえる。正午の飛行機でラパスを出発し、計三十時間のフライトと七時間のトランジットの末に、予定通り、家に帰り着くと、その十時間後からは、もう仕事を始めなければならない。その想いが、新年を迎えて、華やいだ外の風景とは裏腹に、私を鬱状態にしていた。
坂道を登る
ラパスのサガルナガ
空気薄くて百歩歩めず
五億年
かかってたったの八十円
三葉虫の値段よ哀れ
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