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2001年03月号 掲載

 
ペルー・アマゾニア紀行 12
関 洋人 (大洲市在住)

青空床屋で
 セルバツアーに出かけた翌朝も、われわれは六時過ぎに起きて、飽きもせずにベレン市場に出かけた。朝食は例の屋台で焼き魚定食。レゲアと呼ばれるナマズがうまい。
 食後に喉が乾いたので市場の中でオレンジを山積みにした店を見つけてジュースを飲んだ。ふと、隣の店を見ると亀のゆで卵が月見団子のようにきちんと積み上げて売られている。もちろん亀好きのドクトルは魅せられたようにうっとりとした表情で見入っていた。  市場を出て、ベレン地区の高床式住宅へ続く坂をずっと下っていった。道の脇に、鏡と櫛と鋏、椅子の一式で腕を振るう青空床屋が十人以上たむろしている。私は、以前にNHKの“シコ・メンデス(一九八八年十二月に暗殺されたブラジルの環境保護運動家)”を偲ぶドキュメンタリー番組でリポーター役を務めていた俳優の緒方拳がリオのファベーラ(スラム)で散髪してもらっているシーンを思い出した。見まわすと一人だけ客のついてない床屋がいた。私の視線と彼の視線が合った瞬間、私は吸い寄せられるように彼の客となっていた。
 “3~4センチ短くしてくれ。何分くらいかかる?”
 “5分もかからない”
 そんな簡単なやりとりの後、彼は大胆に私の頭をバッサリと刈った。水も湯も化粧品も一切使わない。アッという間に、頭がずいぶん軽くなった気がした。と、思ったら、鏡を見せて“どうだ”という。私は頷きながら散髪代の5ソル(1ソル45円)を彼の手に握らせた。たしかに5分もかからなかった。そばで見ていたドクトルは口髭を整えてもらった。こっちの方は1ソルの勘定だった。
(つづく)

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