過去の連載記事
同じ年の連載記事
2002年06月号 掲載

 
オアハカ メキシコ南部山岳地帯 
関 洋人 (大洲市在住)

芋虫の酒“グサーノ・デ・マゲイ”
 サンダル愛好者である私は、メルカドで古いタイヤを使って作ったサンダルを見つけ、面白がって一つ買った。ところがこれは失敗だった。緒の部分が、足の親指と人差し指の間に食い込んで我慢ができないほど痛い。今では我が家の靴箱で埃を被っている。
 メルカドで売っているオアハカ名物をもう一つ。有名な地酒、メスカルだ。メキシコの酒と言えば、テキーラが有名だが、メスカルはテキーラとは原料種が異なる。両者共、竜舌蘭が原料であることに変わりはないが、その種類が違うのである。そして、もうひとつの違いは、テキーラが、あくまで工業的管理の下に生産され、品質についての規格もあるのに対して、メスカルの方は家内工業的に作られ、規格も決められていない。つまりメスカルは地酒の名にふさわしく、一つに括るのが難しいくらい、さまざまな種類と個性を持っているということである。さて、その数あるメスカルの中でもいちばんのお勧めはやっぱり、“グサーノ・デ・マゲイ”。原料の竜舌蘭にくっついている芋虫入りのメスカルである。いわば、マムシ酒のようなものだが、瓶の中にいるのが蛇ではなくて、芋虫だから可愛いもんだ。アフリカの一地方や、オーストラリアのアボリジニの例がよく知られているが、世界を見まわすと、芋虫が人々にとって重要な蛋白源になっている所もある。食べて悪いものである筈がない。この酒に入っている芋虫の味は乾しエビのようで、食感は、小さい頃に蜂の巣をたたき落として食べた蜂の仔に似ていた。
(つづく)

Copyright (C) H.SEKI. All Rights Reserved.
1996-2007