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1997年11月号 掲載

 
ラパス 
関 洋人 (大洲市在住)

イリマニ山、標高6,480メートル

急傾斜のサガルナガ通り
 高山病対策の第一は、高地への到着日にはなるべく動かず安静を保つことである。我々は、ラバスに着いた日には、ほとんど一日中ホテルに籠もりベッドに横たわっていた。ちなみに高山病になる三悪とは、セックス、酒、風呂である。後頭部が重く、軽い頭痛が続く。時々息苦しくなり、その度に深呼吸を繰り返す。ある、日本人旅行者はホテルで高山病に苦しんだ時に、少しでも空気が濃い場所で体を休めようとしてベットから降り床に横たわったそうである。気持ちはわかるが、その程度で効果があるとは思えない。
 窓辺に立つと、眼前に標高六、四八○メートルのイリマニ山。高いために頂はほとんど常に雲がかかっている。翌日は午前二時半に目が醒め、朝まで眠れない。まあ、前日の昼頃からずっとゴロゴロしてたのだから当たり前と言えば当たり前。
 九時にホテルを出て街へ出る。先ず旅行社を訪れ帰りの飛行機のリコンファーム。私の方は問題なかったが、ドクトルの予約はなぜかリオでキャンセルされているとのこと。すぐに再予約して事無きを得たが、さすが南米の優良企業ヴァリグ・ブラジル航空、マイス・オウ・メノス(※アバウトなこと)でなかなか油断できない。


サルティーニャとコカ茶のティーバッグ
 旅行社で、ぼんやりした頭に多少の衝撃を受けた後、民芸品店が密集していることで有名なサガルナガ通りへ向かった。ラパスは高地であるだけでなく、起伏の多い坂の街である。特に上り坂では息切れし、時々立ち止まっての深呼吸が必要となる。民芸品の店や土産物屋を何軒となくひやかしてまわり、昼頃に友人のT夫妻のアパートに着いた。そこでラパス名物サルティーニャとコカ茶の昼食。サルティーニャとは、ボリビア特有の餃子の形をしたパンで、街の何処にでも売っている。専門の店もあるし、おばあさんがつくる端から売っている屋台のような店もある。大きさは手のひらに丁度のっかるくらいだろうか。側のパンはどちらかというと、粘りが少なく、そば饅頭のようにボソボソした感じだ。中身はカレーに似た香辛料で味付けしたジャガイモや鶏肉が入っている。汁気が多く、不用意にかじりつくと熱い汁が服に飛び散ってしまう。汁をこぼさずに食べるには、サルティーニャを上向きに立てて持ち、そっと少 しずつ、おもむろに食べ始めなければならない。
 三時過ぎ、われわれはT夫妻と一緒にミクロ(ボリビア庶民の足となっている乗り降り自由のボンネットバスあるいはマイクロバス)に乗ってロドリゲス通りのメルカド・ネグロへ向かった。
(つづく)

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