2001年08月号 掲載
メリダ メキシコ・ユカタン半島
関 洋人 (大洲市在住)
ウシュマル遺蹟
メリダを出て二時間ほどでウシュマル遺蹟に到着。真冬だというのに、北緯二十一度に位置するこの辺りの陽光はさすがに強烈だ。遺蹟入口に近い“魔法使いのピラミッド”から“矩形の尼僧院”、“球技場”、“総督の館”と巡る。遺蹟の壁面をおおう装飾の代表的なモチーフは、無数の奇怪な顔をした雨の神“チャック”である。マヤ文明滅亡の最大の原因は地下水位の変化による水不足であるというのが現在の定説だが、その興隆期においてさえも、マヤの人々が水の確保に苦労していたことが窺える。暑さに辟易しながら遺蹟の周囲を歩いていると、イグアナがしきりにチョロチョロしている。あっと思ってイグアナを目で追っていたら、目の前に、捕虫網を持った穏やかな顔付きの日本の老人が立っていた。蝶の採集にはるばるウシュマルまで出かけてきたのだという。日焼けした老人の矍鑠として屈託のない風貌を見ていると、年をとったら私もかくありたいものだという思いを強く持った。
雨の神“チャック”
ウシュマルから車で十分ほどのカバー遺蹟へ。壁面の全てが、三百六十個の、雨の神“チャック”の顔で作られている“仮面の宮殿”と“マヤ・アーチ”を見る。ここでも、あらためてマヤの人たちの水に対する思いの強さを感じざるを得なかった。三時過ぎにウシュマル遺蹟近辺にある唯一つのホテルにあるレストランで遅い昼食。
料理は普通の味だったが、そこで出されたジュースの不味かったこと!空港の近くで大きな工場を見かけたクリスタルというブランドである。メリダ滞在中、不思議なことにどこの店に入っても、注文すると必ずこの不味いクリスタル・ブランドのジュースが出された。たいていどこの町にでもある生ジュースのスタンドもなぜか見かけなかった。メリダのソフト・ドリンク業界はクリスタルによって完全に支配されているのだろうか?
(つづく)
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