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2007年11月号 掲載
第 103 回 ヒレステーキ
 
ステーション  西予市卯之町



 夏がいつまでも終わらないのではという気分にとらわれた年であったが、あっという間に冬、銀杏もほとんど山吹色の葉を落とし、今年もあと残すところはわずかである。寒くなると、たまにステーキが無性に食べたくなる時がある。卯之町駅前のステーションに出かける。アメリカの輸入牛肉はあいかわらず品薄であるが、和牛のヒレステーキがメニューに復活している。焼き方も、ソースも抜群である。自分の家でステーキを奮発する時は、にんにくをサラダ油とバター半々でいため、塩コショウをして、レモンの薄切りを載せた肉を好みに焼いて、酒、醤油を少しかけて食べる。ステーションでは、醤油は一切使わない。シェフの横手さんのつくるおいしいソースがたっぷりかかっている。「醤油より、絶対肉に合います」と横手さんは断言する。私も横手さんの焼いたステーキを食べるといつもそう思う。
 今日は、自家製のフォアグラをふんだんに使ったソースである。美食家で料理に熱心だった作曲家のロッシーニは、自分で考えたフォアグラを使ったソースで牛ヒレ肉のステーキを食べるのが大好きだったそうである。最近ロッシーニ風などといって、フォアグラを使ったソースでステーキを食べさせる店も少なくない。しかし、横手さんのは特別である。フォアグラのおいしさ、吟味された肉の味と絶妙な焼き加減。元気が出る。

 
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