2004年11月号 掲載
第 73 回 駅前のラム・ステーキ
ステーション
西予市宇和町JR卯之町駅前
TEL:0894-62-6231
JR卯之町駅前ステーションのラム・ステーキ。
柔らかくて香ばしい。フォンドボーのソースがよくあう。
最近、卯之町駅前のステーションで、おいしい羊の肉を食べた。ニュージーランドのラム・チョップのステーキがランチで出されている。柔らかくて香よく焼き上げられたラムは、フォンド・ボーのソースがよくあって、ほんとうに美味しかった。
二十年以上も昔のこと、イラクの建設現場で働いていたことがある。バクダッドから西に走り、最近よくニュースに登場するファルージャでユーフラテス川を渡り、さらに五十キロほど先にあるラマディという町に約二年間ほど暮らしていた。仕事でバクダッドへ出かけた行き帰りには、ほぼ中間地点のフアルージャの町でよくシシカバブ(イラクではカバーブと言った)を食べた。店はユーフラテスに架かる橋の手前に何軒か並んでいた。羊の肉の挽肉を練って、焼き鳥のつくねのようなあんばいにして長い鉄の串に通して大きな炉で焼く。焼き上がった熱々のをホブスという平たいピザの生地のようなパンに挟んで食べさせてくれる。味付けはほとんど、塩だけだった。私は、羊の肉がまるで臭みがなくおいしいものであることをその時に初めて知り、羊に対する抵抗感から解放されたことを今もよく覚えている。
カレー風味のシーフードリゾット。ラム・ステーキと一緒に食べた。絶品。
イラクの首都バクダッドは十三世紀にモンゴルの侵略を受けて町のほとんどが破壊されたため、それより前の歴史的な建造物はほとんど残っていない。その数少ないうちの一つであるマルジャン・モスクのそばにあった隊商宿(ハーン)を復元した「ハーン・マルジャン」という国営の有名なレストランがあった。(今はどうなっていることだろう)大広間を取り巻いて一階と二階の小部屋が並ぶ、めずらしい建物だったが、そこで食べた羊のテッカ(ステーキのようなもの)もとてもおいしかった。味付けはやはり塩だけ、羊の肉の持ち味がすべてという、かくしのない、正直な味わいだった。これに反して、ステーションのラム・ステーキはソースに手がかかっている。味わいも複雑で微妙なところがある。同じなのは、羊の肉のおいしさがうまく引き出されていることである。だから、羊をかじりながらつい昔を思い出してしまった。
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