2001年12月号 掲載
第 50 回 水車でひいたそば粉とうどん粉
久保田水車
長浜町白滝公園
TEL0893-54-0714
水車小屋の中
そろそろ新そばの季節である。友人とそばの話をしていたら、長浜町の白滝公園の登り口の水車でひいたそば粉が美味しいが、食べたことがあるかという。「ないよ」と答えると、そば粉だけでなく、うどん粉もきな粉もとても味がよく、ひき立てのそば粉やうどん粉を生そばや生うどんにして頒けてくれるという。食い意地では人後に落ちない私である。ちょうど松山に出かけるついでがあったので、早速寄ってみることにした。
その水車は白滝公園駐車場の奧の道を少し上がった滝の登り口右手。紅葉の木の下にあった。木造二階建の店と直角に連なって石垣の上に水車小屋がある。店の戸が閉まっていたので、呼び鈴を押すと、しばらくして下の民家の方から中年の女性が上がってきた。創業七十年の久保田水車の奥さんだった。今日は、材料が入らず、そばもうどんも無いとのことである。私は、うどんを二キロ、そばを二キロ予約注文して二日後に出直すことにした。そして、二日後、約束の時間に出かけると、店と水車小屋の戸が開いていて、久保田さんがうどんとそばを用意して待っていてくれた。茹で時間を聞くと、うどんが三十分、そばが十五分から二十分とのこと。帰りがけに、申し訳ないが水車を廻してもらえないかと頼んでみた。
茹で上げたそば
素朴な味。今日は間に合わせの天ぷらで食べたが、ゴボウや揚げなどをたくさん入れて、
具だくさんのつゆそばにしてもおいしそうだ。
久保田さんはニッコリ笑って「いいですよ」と言いながら、私を小屋の裏にみちびいた。久保田さんが山側の石垣にさした鉄筋に引っかけてあったワイヤーをはずし、思い切りひっぱっると、十秒ほどして、頭上にザーッという音がして、樋に水が落ちてきた。時を移さず、鉄製の大きな水車がゴーッという堂々とした音をたてて回転をはじめる。コトコトコットンではなく、ゴーッという迫力ある音である。
久保田さんがひっぱつたワイヤーは、木々に括りつけた滑車を通り、三十メートルほど上の滝から引いた水道の水門とつながっている。水門を遠隔操作で開いたり、閉じたりする仕掛けで、十三年前に亡くなった先代が工夫してつくったものだそうだ。
久保田水車の店内で
うどん1キロ500円・そば1キロ800円
その晩は、我が家は水車でひいた粉のそばとうどんを存分にいただいた。水車の音や、滝と紅葉の山を思い出しながら食べたソバやうどんを、私は格別に美味しいものに思った。うどん1キロ五百円、そば1キロ八百円で、ともに五、六人前と言うが水車の音とおなじくかなり堂々とした分量がある。おすすめです。
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