大洲に住む友人がこの店のチャーハンを教えてくれた。あっさりした塩味のチャーハンが格別においしいと言う。実際に食べて私も感心した。強い火力で水分を逃がさずに炒められたごはんは、少しもべとつかず、また固すぎず、玉子の黄色と散らされたネギの淡白な色合いが、ことのほか食欲をそそる。炒め終わる少し前に、サッと御飯にからめられたスープの塩加減が絶妙だった。一見、無口でいっこくそうなご主人の徳田康吉さんにお話を聞くことができた。横浜の中華街で長年修業して十五年前に故郷の大洲で店を始められたそうだ。奥さんの美穂さんの実家は横浜中華街にある中華料理店『紅花』。ただならぬチャーハンの味は、本格中華料理の技の冴えだったのである。美穂さんが「中華は、家族でやっている店の方が美味しいよ。味が変わらないしね」と言われた。
　私にこの店を教えてくれた友人のこともしっかりと覚えていた。
「あの人はいつも海老チャーハンを食べる。海老が好きみたいね」。