過去の連載記事
同じ年の連載記事
2004年08月号 掲載
第 70 回 中国茶の楽しみ ~上海~
 
 
 

湖心亭
中国茶を美味しく淹れてくれる。鶉の卵や豆腐、中国菓子などのお茶うけもいい。
茶代は、大体百元くらいで結構高いが、値打ちはあると思う。

朝の湖心亭は静かである。
 7月15日に、松山と中国上海の間に直行便の空路が開設された。月曜と木曜と週2回の運行だ。
 たまたま上海で古い友人が二人、仕事をしている。しばらく顔をみていないので、思い切って初めての中国に出かけてみた。
 朝は古い上海の中心地区、旧城内にあたる豫園の茶館で中国茶を楽しんだ。日中は宿の和平飯店がある外灘(Waitan)いわゆるバンドに連なる近代建築の写真を撮ったり、旧フランス租界や、魯迅公園の日本人租界のあったあたりをぶらついて、魯迅の故家や記念館、内山書店や金子光晴仮寓の跡を訪ねたりした。市中の所々に、里弄(リーロン)という中国の在来の住居を洋風に改造したアパートが残っている。入口の門を潜って路地に入ってみると、普通の人々の暮らしの匂いが立ち上って来た。夜は、友人が体育学院の中に開いている「龍心館」という柔道場を訪ねた。講道館五段の彼は、仕事の傍ら中国の大人から子供まで、上海で働くアメリカ人やロシア人、在留邦人の子弟らにずっと柔道を教えている。練習を見た後、もう一人の友人と魯迅の故郷紹興の咸享酒屋が上海に出している酒家で簡単な食事をした。甕からブリキの酒器に汲んで注いでくれる紹興酒はまろやかで口当たりがよかった。
 短い滞在の間に、友人の会社で働く女性に中国茶の手ほどきを受けた。 北京の大学で中国文学を学んだという彼女は中国茶にとても詳しい。茶や茶器を専門に扱う市場を巡りながらいろいろなお茶を味わった。中国茶はウーロン茶の缶詰しか知らなかった私には、全てが新鮮な世界だった。
 豫園九曲橋の中に建つ古い茶館、湖心亭は一日中、観光客で賑わっているが、朝には静かなひとときがある。早朝5時半から8時までは地元のお年寄りだけの時間。そのすぐ後なら眺めの良い2階の席でゆっくりとおいしい中国茶が楽しめる。上海行きがくせになりそうだ
豫園
最初は明代に造られた上海随一の伝統的な中国庭園。荒廃していたが新中国成立後改修して公開されている

沈香閣
豫園にほど近い江南最大の比丘尼道場。文化大革命で荒廃し、 一時住宅に転用されていたが修復再建された。朝訪れると、尼さんたちが本堂で読経していた。

 
Copyright (C) T.N. All Rights Reserved.
1997-2012