美しい大洲の町の中でもとりわけすばらしい町並みが健在の大洲市柚木（ゆのき）に志ぐれ餅二葉屋の支店ができた。志保町の店から大洲神社や、竹製品の店の前をゆっくりと歩いて五、六分の距離だ。 　新しい柚木の店にも志ぐれ餅はあるが、私がこの店に立ち寄って、とてもうれしい思いをしたのは大好物の団子があったからである。それも、つき方のしっかりした材料の粉のよさがよく出た味で東京、東日暮里、芋坂下の羽二重団子にくらべても決して負けないおいしさだった。
　田山花袋の「東京とその近郊」には、次のような一節がある。
「団子というものはあっても、昔風の醤油団子などは新しい社会にはめずらしくないと見えて、近頃では、市内には殆どその影をも見せない。……それもどうかすると、場末にはあるけれど、それは大抵はつき方の足りない拙いものばかりである。『団子だけは旨いのがなくなった』…」
　ところが、例の歌のおかげで世は団子ばやり。団子は巷にあふれている。しかし、正直なところ今までおいしいのにはなかなかあたらなかった。
　二葉屋は、みたらし団子がうまいだけでなく、きちきちとして腰のあるわらび餅も絶品だ。そしてとても安い。志保町の店と同じで、こちらも店先で気軽に食べる事が出来る。大洲散策の道すがらに立ち寄ることをおすすめしたいと思う。
　団子が大好きだった子規に倣って
「伊予大洲　団子売る店にぎはひて　団子くふ人　団子もむ人」
　私としては、近い将来、みたらしだけでなく、醤油団子も作って頂けるともっとうれしい。