1997年08月号 掲載
第 7 回 思わず微笑む 完璧のアルデンテ
文化の里 宇和のスパゲッティに驚き喜ぶ
トマトも自家製。シェフの横手洋生さんは42歳。東京で修業を重ねた後、一昨年宇和に帰郷して開店。
休日には気軽に料理教室の講師も務める。「教えるのはそんなに得意じゃないんですが、
味のバラエティを少しでも多くの人に知ってもらいたいと思ってやつています」
ある日の夕方のことであった。私は、JR卯之町駅すぐ前右角の「ステーション」というこの店で、茄子とアンチョビのスパゲッティをたのみ、なにげなく口に運んだ。一口食べて驚いた。完璧なアルデンテなのである。ニンニクとオリーブオイルにアンチョビの塩味が効いたソースもよい。食べている間、麺の腰がほとんど緩まないのに心底感心した。はっきりいって、これほどきちんと、おいしいスパゲッティは「イタメシ」屋がひしめく東京でもそんなに多くはない。ご主人の横手洋生さんにお話をうかがって納得した。横手さんは、本来はフランス料理が専門だが、一晩に一客しかとらない格式のリストランテ『サバチーニ』直伝のイタリア料理を学んだ人だった。素材へのこだわりは並みではない。野菜やバジル、タイム、エストラゴンなどの香草は自家菜園で栽培するし、地元で手に入らぬパルミジャーノなどのチーズや生ハム(プロシュート)、オリーブオイルなどは、つてをたどって、直接取り寄せている。とにかく、出てくるものが、みんなおいしいのだ。スパゲッティやピザはもちろんのこと、パンに塗って食べた自家製のフォァグラがまたとびきりだった。
誕生日や、なにかのお祝いの時には、リーズナブルな値段でコース料理もたのめるし、勤め帰りや、休日に仲間と手頃なハウスワインを飲みながら、新鮮なイカやタコのマリネなど、オードブルを楽しむのも愉快だと思う。古い宇和の町並みを歩いた帰りには、ワインを楽しみながら横手さんの絶妙の味を堪能してみよう。
生ハムとキノコのスパゲッティ。フォァグラを塗ってクルミのパンを食べる。
焼ナスのアンチョビソース
横手さんのレシピで特注したパンもおいしい
自家製のアイスクリームやケーキも申し分なかった
Copyright (C) T.N. All Rights Reserved.
1997-2012