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1997年12月号 掲載
第 11 回 魚市場の食堂
みなもと食堂 
八幡浜魚市場前 
TEL0894-23-1945 土曜定休 
 市場の食堂には、はずれがないという。東京の築地しかり、大阪の黒門、北陸金沢の近江町も又しかり。八幡浜魚市場のすぐ前にある「みなもと食堂」に出かけてみた。

みなもと食堂の三人娘
左から、岩城宮子さん、高田幸子さん、登口千鶴子さん
 店を切り盛りしているのは岩城宮子さん、高田幸子さん、登口千鶴子さんの明るく元気な三人の女性たちだ。高田さんは、前に持ち出した調理台の上に山と積まれた塩サバを手際よく切り身につくっている。登口さんは、これから魚の陸送に出発する運転手さんに頼まれた「おにぎり弁当」を丁寧に詰めている。岩城さんは、カウンターの中で太刀魚の天ぷらを揚げている。「みなもと」という店の名は、時間は決まっていないが、必ず一日に一度は店に顔を出す女将さん、源洋子さんの苗字である。

おにぎり弁当 550円
おにぎりの立派さ、おかずの豊富さとコンビネーションの良さ。

「みなもと食堂」の朝ごはん
ホータレの煮付け、 じゃがいもの煮っ転がしカレー風味、味噌汁、大根のお葉漬け
 店内は、奥に長い三畳ほどの広さで、L字形のカウンターに五、六人もかければ一杯になる。空いていた一番奥に座って、早速朝食を注文した。定食屋の常で、あらかじめ作り置いた日替わりのおかずが、小さなガラスケースの中に何種類か並べられている。私はおかずにホータレ(小鰯)の煮付けとジャガイモの煮っ転がしを選んだ。味噌汁の実は、揚げ豆腐とワカメと大根。炊き立てのご飯に大根のお葉漬けが付いた。この朝食は、食べてみると実にうまかった。ホータレを食べたのは久しぶりだったし、ホクホクしたジャガイモに少しだけつけてあったカレーの味もとてもおいしかった。
 朝一番から、生きのいい魚を相手に、思いっきり働いた魚市場の人たちが毎日、毎日、繰り返して食べる朝ごはんが美味しくないわけはないが、それにしてもおいしいのだ。
 心の底から、いや腹の底から「うまいッ」と言いながら食べ続けていたら、岩城さんが揚げたての太刀魚の天ぷらを「食べてごらん。おいしいよ」とお皿にのっけてくれた。
「みなもと食堂」の店内には品書きらしいものは何一つないが、定食以外のメニューもなかなかに豊富だ。カウンターのすぐ向こうに温かい湯気を立てているおでん、チャンポンにうどん、焼きそば。肉丼、玉子丼、親子丼、そして焼きめしとオムライス。お刺身は置いてないが、食べたい人はちょっと前の市場に行って好きな鯛でもアジでも、タコでもイカでも、海老でも貝でも買って来るとよい。待っていれば、目の前で調理して食べさせてもらえる。味噌汁やあら煮ももちろん楽しめる。



豪快な冗談を飛ばすタナカ鮮魚の大将が奥さん(左)と一緒に今日もやって来た

 
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