先日、博多に住む同窓の友人からクール宅急便が届いた。
　何かと思って開けてみたら、ラーメンの麺と焼豚、メンマ、そして薬味のネギや紅ショウガ、擦りゴマが綺麗に詰められていた。スープは一人前ずつ小さなプラスチックのボトルに分けたのが八本入っていた。
　二月に博多に行ったときにその友人と中州で飲んだ。その帰りに友人はラーメン好きの私をある屋台に案内してくれた。
　私は、ラーメンとりわけ、九州のラーメンは総じて美味しいと思う人間である。その屋台のラーメンも当然のように、おいしいと思って一気に食べ終わった。ところが、店を出た後、友人が首をかしげて言った。「あげなもんじゃなか。スープがうすい」。
　私は「ふーん、そんなものか。でも、九州のラーメンは水準が高いんじゃないの、四国のうどんのようなもので、何処で食べてもまずいと思ったことはないよ」というような言葉を彼に返した。しかし、彼は承知しなかった。「九州にもいろいろある。博多も熊本も久留米も鹿児島もそれぞれに違う。昔の博多ラーメンはどちらかというと今の久留米に近い味でスープがずっと濃い」のだと言う。あいまいでおおまかな私の言は軽く一蹴された。私はラーメンについて現れた、故郷博多に対する友人の思いの深さに直面して心打たれるとともに、少し当惑さえもしたのである。
「そのうちほんものば、送ってやる」と友人はポツリと言った。
　早速、作り方を見ながら作ってみた。申し訳ないほど行き届いているので簡単だった。心すべきは、湯をたっぷりと沸かすこと、そして、麺を煮すぎないために、具や麺を手早く扱えるようにしておくことくらいである。
　家族を集めてみんなで食べた。一口すすって脱帽。
　麺は細からず、太からず、適度に歯ごたえがあってのどごしがよく、なにより友人が言うようにスープに滋味が溢れていた。あっという間に食べ終えたが、ほんとうにスープが美味しかった。独特の豚骨の匂いがあり、濃厚であるが決して嫌味ではない。どちらかというとすっと入る味だ。濃いとは、濃まやかであることかと思うほどであった。