長崎へ出かけた帰り道、別府港を午後八時五十分発の宇和島運輸フェリーで八幡浜港に向かうことにした。午後三時過ぎに長崎市内まで伸びた高速道路に入ると、別府インターには、三時間弱で着く。船の待ち時間を使って、少しだけ別府を楽しんだ。先ず、インターから市内へ下る道に入ってすぐの、別府市営の堀田温泉へ。堀田温泉のある場所は、別府から湯布院を経て日田に通じる、古くからの街道の入口にあたり、江戸時代から温泉場として知られていたという。実は私は、数ある別府の温泉の中でもこの温泉が大好きである。まず泉質がやさしいのがいい。湯がやわらかく、ほぼ無色透明。湯のやさしさということでは、わが道後温泉と少し似ている気がする。温泉の効能書きに、即効性はないと正直に書いてあるが長旅の疲れを取ったり、のんびり温泉につかるのには最適だ。建物は平成十五年に建替えられたばかりで、岩組みの露天風呂もある。湯上がりの休憩室もあるし、バリアフリーの設計になっているので、お年寄りや身障者の方も安心だ。入浴料金が安いのもありがたい。
　堀田温泉を出ると、すぐに北浜の餃子「湖月」に向かう。車で約十分くらい。ＪＲ別府駅の近くである。車は、近くのトキハ百貨店の駐車場に停めるのがよい。駐車場から歩いて数分。百貨店から駅に向かう道路を少し行き、左手、久留米ラーメンの店の先の裏さびた露地に入る。最初に湖月の餃子を食べたのは、義兄に連れられて行った中学生になったばかりの頃だから四十年くらいも昔の事になる。しかし、餃子の味も、裏露地の佇まいも、店の雰囲気も不思議なほどに変わらない。
　店はカウンターが一本。メニューはきっぱりと、餃子だけ。私はいつも二人前を注文する。焼き立ての餃子を酢醤油にトウガラシを多めに入れて、頬張ると、すぐに汗が吹き出てくる。車でない時は無論ビールを飲む。