2004年12月号 掲載
第 74 回 宇和島の鯛飯
荒磯
宇和島市栄町港3丁目2-9
TEL:0895-25-3569
お酒を飲んで、おいしい魚をいろいろ食べて後、仕上げにこの鯛飯を食べた。今までの割に合わぬ思いがほどけてうれしかった。別の日のお昼に、子供を連れて出かけたが大好評だった。予約はした方がよいと思う。
私は、愛媛の南予地方一円で、観光客に人気のメニューとして定着した「鯛飯」に、何かしら腑に落ちぬものがあった。新鮮で、おいしいものばかり集めた料理だから、決して不味いわけはない。ではなにが不満なのか。勝手な言い草だが、理由をあげてみよう。先ず、生卵と出汁と醤油を併せたつけ汁の色が悪い。醤油の色が強く、ややどす黒く感じる。薬味の彩りもそれを補っていないと思う。次に、つけ汁の中に刺身を浮かせたときに、なんとなく主役の鯛の刺身が心細く見える。私だけの偏見と言われようが、けちくさい雰囲気に思えて仕方がない。心なしか貧弱に見える。天然ものの鯛とはいえ、勘定も観光的でリーズナブルではない気がすることが多い。(岩松の大畑旅館など、例外はもちろんある)。これなら、よく知った魚屋に行き、適当な鯛を刺身にしてもらって、好みの薬味で存分に味わった方がよほどよいと思うことが多くなっていた。ルーツが豪快な南予の漁師料理にしては、少し気取りすぎで淋しくないだろうか。
ところが、最近、宇和島で、そんな私の偏見を解消する格別においしい鯛飯にあたったので、ご紹介したい。この店では、ご飯の上に、最初から、刺身も卵も薬味ものっけて付け汁もかけてある。材料は飛び切りで、見ての通り盛りつけが又美しい。豪快な雰囲気もそれなりに楽しめる。いわば、鯛飯どんぶりだ。ごはんと薬味と刺身の量のバランスがとてもいいし、付け汁の味もおいしかった。大きな鯛を下ろして大人数で取り分けて食べるのならともかく、一人ずつ食べるのなら、タイミングも、自分でよそってやるやり方よりこの料理には、適していると思う。
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