2003年04月号 掲載
第 61 回 鷹の子温泉のおでん
赤 丹
松山市鷹の子鷹子温泉内
レンコン、ふくろ(お餅入り)、牛肉の筋、ウズラの玉子
休みの日に中学生の頃の友人と鷹の子温泉に出かけることがある。鷹子温泉は、弘法大師が湧出を予言したという言い伝えに夢をつないだ地元の人たちが昭和三十八年に会社をつくって掘削し、昭和三十九年に営業を開始したものだ。さすがにお大師さまの温泉だけあって、高温良質(硫化水素を含有するアルカリ性単純泉)で湧出量も豊富である。鷹子はもともと松山城下をはずれた田園地帯にあたるためでもあろうか、宅地化が進んだ今もどことなくのんびりした感じがある。私たちは、手軽で飾り気のない鷹子温泉の雰囲気が気に入っていて、月に一度はなんとなく、誰から言うともなく鷹子に集まる。とりとめもない話をしながら湯につかり、湯から上がると、温泉の食堂にあるおでん屋さん「赤丹」に立ち寄るのがならわしだ。
鷹子温泉につかったら「赤丹」のおでん。
やや薄目の味付けのおでのおでんの味のよさ、そして店のご夫婦のひかえめな接客が心地よい。焼き豆腐、牛肉の筋、れんこん、こんにゃく、ぎんなん、ウズラの玉子、筍、じゃがいも、タコ、ロールキャベツ……なんでもいけるが、自家製のゴボウ天の味は格別だ。二人の友人は生ビール、私は冷たいお茶。昼近くまであれやこれやといただき、最後はなめこぞうすいでしめくくる。勘定も大衆的でありがたい。
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