2008年10月号 掲載
『「万作と草田男」-「楽天」の絆』展
町立久万高原美術館
ギャラリートークや野点も行われた
10月4日久万高原町の町立美術館で始った「万作と草田男」展に出かけた。初日のその日は、今回の展覧会のためにつくられた二つの映像作品が上映された。撮影者の詩人で映画監督の稲川方人(いながわ まさと)さんと映像作家の狩野志歩さんらのギャラリートークもあった。
展覧会の図録。草田男の娘さんである中村弓子さんの味わい深いエッセイがおさめられている。
右が草田男、左が万作。
展覧会のタイトルにある「楽天」は大正時代の旧制松山中学を舞台として、伊丹万作や中村草田男、後に画家になり左翼運動に入って獄死する重松鶴之助、映画監督になる伊藤大輔らがつくっていた手作りの回覧雑誌。かれらの青春のあり方、交友のあり方の証しでもあった『楽天』の実物は現存しないが、その後継誌ともいうべき『朱欒』が展示されていた。伊丹万作の美しく斬新なデザインの表紙に目を引かれた。中身は、カラーコピーが会場に用意されていて、手に取って読むこともできる。小さい展観ではあるが、草田男の墨跡や、万作の死に際して万作の妻に宛てた書簡、重松や、万作の油彩、万作のさし絵画家の仕事なども展示されていてたいへん充実した内容だった。図録も親切で読みでがあった。
別室に子規、漱石らが愛した吉田蔵沢の墨竹画、三輪田米山の書も展示されていた。これは「よもだ」という一見悪い印象で受け取られかねない伊予人の個性の美質を掘り起こして、キーワードとして企画展を続けてきた久万美術館が「よもだ」の偉大なる先覚者として二人をとらえているという説明であった。
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