昨年、高知市五台山の県立牧野植物園に牧野富太郎記念館が建てられ施設が一新された。建築家内藤廣の設計だ。内藤はこの設計で第十三回村野藤吾賞を受けた。
　六月十五日の朝日新聞に、内藤の「一九五〇年代以降の建築は自己主張を繰り返してきたが、いまは私を捨てて植物に迫った牧野さんから学んだ方がいい」という受賞講演の言葉が紹介されていた。いたずらに個性を誇示しない作風の内藤にふさわしい言葉だと思った。
　記念館の設計について、内藤は、どうやって建物を山におさめるかということばかり考えていたそうだ。
　完成した建物は高さを抑え、五台山の地形と見事に一体化している。屋根や梁、壁床などには木が多用してあって温かい。屋根構造は風荷重に対応する鉄骨の背骨と集成材の肋骨から成り、中央にキール（竜骨）と称する鉄骨の背骨を架構し、両端は大地でしっかりと受け止められている。
　すべてに、個性的だが、出しゃばらず、つつましい。味わいのある建物だと思う。周辺の排水路も、元々あった石積みや現地で発生する野石を利用した「近自然工法」での施工。自然景観に見せかけではない、こまかい配慮が見られるのもすばらしい。 近くには五台山竹林寺もあり、植物園とあわせて一日楽しめる。入場料は信じられぬほど安い。子どもは無料だ。
　帰りは牧野富太郎の故郷佐川に寄り、酒蔵建ち並ぶ町の風情を楽しむのもいいだろう。

高知県立牧野植物園 アクセス情報

所在地／ 高知県高知市五台山4200-6
TEL088-882-2601
交通高知駅から車で約25分、高知空港から車で約30分、はりまや橋から土電バス20分牧野植物園前下車すぐ。 開園時間／ 9:00～17:00
休園日／ 月曜日（月曜日が休日の場合はその翌日）
年末年始（12月27日～1月1日）
入園料／ 一般 500円（年間入園券2,000円）
高校生以下 無料