2002年07月号 掲載
四国最大規模の茅葺き民家「土居家」〈1828(文政10)年築〉の右脇に「農村体験交流館」が整備された。
「農村体験交流館」の食堂。
5月末に、「茅葺き民家交流館土居家」に新施設が落成したと聞き久しぶりに出かけてみた。肱川町の風の博物館の先から、尾根筋を通る林道へ。この道は、かつては十数戸の集落があり名物饅頭で知られる茶店もあった棟峠を越えて惣川の土居家背後に辿り着く旧往還をなぞっている。何年か前、土居家の修復が行われている頃に棟峠(むねんとう)の茶堂脇の藤本さんのお宅で道を尋ねたことがあった。茶堂は健在。藤本さんのお宅には洗濯物が干してあったが、お留守のようなのできょうは先を急ぐ。しばらく走ったところで、ほとんど車と出逢うことのなかったこの道で、大型の観光バスと遭遇。離合するスペースががないことはないがすこし緊張した。鹿野川ダムの登り口から20分強で土居家の背後にあたる峠の上に出た。車を止め展望台から眼下に広がる天神の集落や谷の向かい側にそびえる雨包山、左手の大野ヶ原カルストの方を眺めた。土居家はこのすぐ下で、大きなS字の急坂を下れば5分もかからない。
天神の集落を散策するのも楽しい。旧惣川郵便局。
天神の集落、遠くに雨包山と四国カルスト。
庭園のモミジ。
土居家の駐車場に車を止め、母屋をのぞき、離れの庭園に建った茅葺きの茶室「農村文化伝承棟」を見る。母屋の縁側に腰かけてしばらく休んだ後、既存の倉庫をほぼ新築に近い形で修復した「農村体験交流館」に入った。顔見知りの地元のご婦人が「あら、ずいぶんだったね」と声をかけてくれた。吹き抜けの落ち着いた雰囲気の食堂でいつもながらの地粉「うどん定食」を食べながらお話をうかがった。土居家も、だんだんと繰り返し訪れる人が増えているそうだ。たしかに、こんなにゆったりとした時間の流れを味わえる場所はめったにないからなあと得心する。今度は、雪がちらちらして、囲炉裏に火が入る頃に泊まりがけで来たい。
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