2002年10月号 掲載
子供たちと、アンパンマンの凧で夏の凧上げを楽しんだ。江戸時代、
凧揚げは子供の健康に最高によいとされたという。
夏休みの一日、子供たちに大人気の「アンパンマンとやなせたかし展」が開かれた喜多郡五十崎町立五十崎凧博物館をたずねた。
凧博物館には、冬に子供とあげる凧を買いに行ったり、お昼時に館内にある手打ちうどんの店に寄ることはあったが、最近はご無沙汰だったし、展示をきちんと見たことはなかった。
展示室に入ると、最初は日本の凧の歴史の展示。凧の起源について、史実と空想の別を踏まえ、委曲をつくした説明がしてある。凧が庶民に広く愛された江戸時代以降、凧は俳句や川柳など様々な文芸に登場した。凧好きの大作家滝沢馬琴が「椿説弓張月」で大凧を活躍させたエピソードなどについて丁寧に解説してある。
美しい中国の凧がたくさん吊してある場所を過ぎると世界各地の様々な凧や日本中の凧が展示してある部屋に入る。風土や地域性が凧にそのまま表れて伝統的な形になったものもあれば、凧の伝統のないところに全くユニークな凧の形が考案された場合もある。日本の凧も、基本的な形で大きく一括りにはできても、それぞれの地域の凧の作り方や素材、形にそれぞれの個性があって興味深い。
凧を科学する部屋に行けば、なぜ凧が揚がるのかという空気力学の説明がある。世界や日本各地の気候と凧の揚げ方の関係についても知ることができるようになっているし、地元五十崎の凧の作り方を本物の材料や工具を使って展示し、ビデオでも解説してあるので、五十崎の凧の個性がどうやって育まれてきたのかがよくわかる。
アンパンマンの展示は、特に鉛筆で書かれた無着色の原画がまるで子供たちのたくまぬ落書きのようでとてもおもしろかった。
凧を媒介として、歴史、地理、民俗、科学、美術、工芸、文学など様々な分野の想像力が刺激される。故郷の凧から世界の広がりを実感できるすばらしい教育施設だ。
ふだんは観光客の姿も少なく、落ち着いた雰囲気の五十崎の町並みで
凧の展示室
五十崎凧博物館
愛媛県喜多郡五十崎町大字古田甲1437 TEL:0893-44-5200
五十崎の凧合戦
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