2000年01月号 掲載
スキー場と釜揚げうどん
冬の楽しみ―上浮穴郡久万町
うどん「心」の看板
はじめて、久万スキー場(スキーランド)に出かけた。
何日か前に十年ぶりという大雪がふったせいか、雪質が予想外によかった。皿ケ峰コースというのを滑ったが中級者にぴったりのコースでとても快適だった。冬休みに入って学生たちの姿が多い。リフトからゲレンデを眺めるとスノーボーダーが圧倒的に多い。若いカップルが仲良く滑っているのを見るとなにやらうらやましい。爺臭い言いようで恐縮だが、南国の愛媛で自分たちがあの年齢の頃はこんなにスキーは手軽でなかった。ましてスノボーなど見たこともなかった。いい時代になったと思う。
トリプルリフトの隣にすわりあわせた若い女性がゲレンデを滑るボーイフレンドにくったくなく手を振っている。声をかけるとやはり大学生。高知からだという。雪が思ったよりいいのがうれしいといっていた。入場料千円、四時間券三千円。十一回以上滑らないと回数券の方が割安になるな、などとケチな考えを起こしてガンガン滑っていたら大転倒。
まあいいかとおしまいにした。
ゲレンデへのアプローチが短く安全なこと、リフト待ちがほぼないに等しいこと、そして初心者ファミリー向きを併設したどちらかというと中級向けのコースであることから家族で訪れるのにはとてもいいスキー場だと思う。
帰りに久万町図書館前のさぬきうどん「心」で釜揚げうどんを食べた。ご夫婦二人の店だがここのうどんが格別においしい。
さぬきうどんとうたっている通り腰がある中くらいの太さのめん。小が三百円、大が四百五十円、特大が五百五十円。量もすごいがとにかくうまい。薬味のしょうがと葱とすりゴマと揚げ玉、砥部焼の大きなとっくりにはいった醤油味のつよいアツアツのつゆがテーブルに置いてあって自分でそばちょくのデカイのに好きなだけそそぐ。つゆは大豆と椎茸とさばぶしと炒り子がはいっているのではないだろうか。うどんにつけると絶妙の味わい。理屈抜きのおいしさだ。
店の奥の大きな釜でいっこくそうなご主人が黙々とうどんを茹でている。静かな雰囲気を湛えた奥さんは外に人が並ぶほど混雑しても微笑みをたやさない。「心」という店の名の由来を知らないが、仕事に品格と心意気を感じさせる店だ。それもよくある通ぶった蕎麦屋やうどん屋のように押し付けがましい、いばったところのないのがいい。 食べ終わった客は器を黙って配膳口に戻しに行く。自然とそんな気持ちになるのがうなづける店である。
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