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2001年03月号 掲載 
日土ふるさと祭りで小学校の建築模型展示
八幡浜市日土地区

日土小学校をたずねてみた
 八幡浜市日土地区は公民館活動が活発なことで知られる。毎年公民館主催で開かれるふるさと祭りの会場に、今年は学校建築に多くの傑作を残した松村正恒氏の作品である八幡浜市立日土小学校(現存)と八幡浜市立神山小学校(新校舎に建替え)の模型が展示されていると聞き出かけてみた。
 会場は川沿いの農協である。快晴の建国記念日、ふだんは静かな山間の集落が大賑わいだ。農協の建物がアミューズメント・パークに早変わりし、安くておいしい食堂や、ギャラリーや劇場になっていた。 建物の中に入ると子供たちの劇を見るお年寄りの歓声が廊下に聞こえてきた。目当ての模型は子供たちの書道作品などと共に、別棟の倉庫に展示されていた。建築模型の展示は、子供たちをはぐくむ学校建築の傑作として名高い日土小学校がある日土ならではの企画。親子連れが入れ替わり立ち替わり模型になった母校をいろいろな角度から熱心に見ていた。

日土小の模型

神山小学校の模型は地元出身の日大建築科4年生二宮一平さんの作品。 建築家の意図に迫るため図面を忠実に再現。


露店を楽しむ子供たち
 神山小学校の模型を制作したのは地元日土小学校の卒業生で、日本大学建築学科の二宮一平さん。二宮さんは母校ではなく神山小学校の模型を制作しているが、かつて現実にあったままの姿ではなく、現実化しなかった部分も図面から起こして製作したもので、建築家松村氏の意図した全体像を忠実に見せている。  日土小学校の模型は神戸芸術工科大学の花田佳明氏が学生を指導して制作されたものであるが、模型を見ていたら実物も見たくなり、私は日土小学校まで足をのばした。帰りには清水病院や幼稚園として活用されている清水家の広壮な庄屋屋敷など日土の名建築を外から眺めて廻った。梅が香り、ぽかぽかと日差しがあたたかくてとても幸せな時間を過ごすことができた。

日土小の川に面したテラスと階段



松村正恒氏の生涯と建築を知るにはご自身の書かれた『無級建築士自筆年譜』(住まいの図書館出版局) の一読をおすすめしたいと思います。ご本人が「学術書でなく、硬くなく、読み始めたら止まらない、 マンガ本みたいに編集できませんか」という硬い意志でつくられただけにわかりやすく面白い本です。 写真も素晴らしい。建築へのそして、人と社会への愛情が溢れた本です。八幡浜市役所建設課に勤め、 コストや工期など様々な制約と戦いながら、健康で清潔な学校建築を追求した松村氏の仕事はこれから の地域の学校建築を考える上で決して忘れることの出来ないものと思います。

 
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