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2000年11月号 掲載

 
ペルー・アマゾニア紀行 8
関 洋人 (大洲市在住)
 亀食堂を目指して動物園を出たわれわれは、一時前には街の入口に戻ってきた。おっちゃんは、モトカーロのスピードを落とし、道路の左右に店を開いている食堂のメニューを目を凝らして確かめながら行く。(ほとんどの食堂の店先には黒板にチョークで今日のメニューが書いてある。)
 メニューに亀料理とある店は少ないし、川亀を食べさせる店はなかなか見つからない。おっちゃんは川亀にこだわっていて、行く先々の亀料理の店で、「川亀はないか?」と必ず確かめる。しかし、どの店でも、かえって来たのは、「陸亀料理だ」という答えばかりだった。
 探しまわるうちに、ついに、われわれは、ベレン市場の入口の屋台のめし屋街にまで来てしまった。時計を見るともう一時四十分が過ぎようとしている。もともと亀が食べたいと言い出したドクトルには川と陸の亀の違いにそれほどのこだわりはなかった。われわれは、おっちゃんに、川亀は次の機会にしようと言いながら、行き当った陸亀料理を食べさせる一軒の屋台食堂の椅子に腰をおろした。早速、亀料理を注文する。この店の亀料理は亀とユカイモをカレーに似た、香りの強い香辛料を効かせて煮込んだものだった。私の皿に入っていた亀肉は頭から首にかけての部分である。香辛料のせいで亀そのものの味はよくわからない。


陸亀料理
 亀肉は、肉というよりは筋のような感じでナイフが通りにくく、すこぶる食べにくい。ナイフとフォークを使って亀の首と格闘していた私を見かねたのか、モトカーロのおっちゃんが“ここイキトスにはエチケットなどない。かまうことはないから手づかみで食え”と言う。なんとか食べ終わり、一息ついていると、私が皿に残していた汁を目敏く見つけたモトカーロのおっちゃんが“このスープがいちばん旨いのだ。スープを飲め”と強くすすめる。言われるままに皿に残したスープをすすった。私は亀料理の味はよくつかめなかったが、ドクトルは念願の亀を口にしたせいか一応満足の表情である。喉が渇いていたので、ビールとジュースを注文するとこの店にはコーラしか置いてなかったが、近くの店までわざわざ買いに行ってくれた。亀料理二人前、ビール大1、ジュース1、で、しめて1soles。
 われわれは、アルマス広場まで連れ帰ってもらい、ここでモトカーロのおっちゃんと 別れた。別れ際におっちゃんの名を聞いた。アルマンド・ルイス・アングロという。
 アルマンドとわれわれはとても気が合って楽しかったので、ドクトルは盛んに私を、人を見る眼があるとほめてくれた。
(つづく)

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